雇用調整助成金の申請方法をわかりやすく解説します【6/15更新】
こんにちは、マネーフォワード クラウド公式です。新型コロナウイルス感染症流行の影響により休業を余儀なくされ、従業員の皆さまの雇用を守るために休業手当を出している事業者の中で、雇用調整助成金の申請を検討されているケースが増えてきています。
雇用調整助成金の申請は少し複雑なため、プロダクトの機能で申請サポートすることに加え、申請の流れを少しでもご理解いただければと思い、noteに流れをまとめました。検討されている事業者の方の参考になれば幸いです。
【6/12、雇用調整助成金のさらなる拡充が発表されました】
・助成額上限の引き上げ(1人1日あたり8,330円→15,000円)
・助成率の拡充(解雇せず休業した中小企業の助成率が9/10→10/10)
・上記助成額上限、助成率拡充は令和2年4月1日まで遡って適用。差額は労働局・ハローワークにて計算するため、再申請不要。
・緊急対応期間が3か月延長(6/30まで→9/30まで)
【上記を踏まえ、本noteでは6/15に下記について更新しました】
・緊急対応期間が延長した点を更新
・各種様式、ガイドへのリンク見直し
雇用調整助成金とは
雇用調整助成金とは、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が雇用の維持を図るための休業手当に要した費用を助成する制度です。
本制度は恒常的に実施されている制度ですが、新型コロナウイルス感染症の影響を受ける事業者を支援するため、2020年2月より支給要件の緩和が行われ、さらに緊急対応期間として2020年4月1日〜9月30日(※6/15更新:期間が6月30日までから9月30日までに延長となりました)の休業実施においては、さらなる支給要件の緩和、助成率の拡大が特別措置として実施されています。
(雇用調整助成金ガイドブック(簡易版) より引用 【6/15更新】)
今回は特別措置の申請方法について、初めての方にもわかりやすくご紹介します。
記事内の申請様式特第8号については、マネーフォワード クラウド給与内にリリースされた「雇用調整助成金申請サポート機能」を利用して、一部申請様式に記入する情報を簡単に整理することができます。こちらの機能について詳しくは下記をご覧ください。
本記事では、申請の流れを中心にご紹介していきますので、支給要件や助成率等については厚生労働省のサイトをご確認いただきますようお願いいたします。
申請〜振り込みまでの全体の流れ(特別措置)
通常の雇用調整助成金の申請は、下記のような流れで行います。
■雇用調整助成金の申請の流れ【通常時】
(1)休業計画を立て、労使協定を行う
(2)1に基づいた休業実施計画届等を提出する
(3)雇用調整(休業)の実施
(4)支給申請を行う
(5)労働局による審査・支給決定・振込
今回の特例措置により、申請の流れには下記の変更点があります。
【概ね20人以下の会社や個人事業主】
・全面的に提出書類が簡素化(様式3種、添付書類3〜4種で申請可能)
・休業協定書は不要。しかし、休業前に労使間で休業内容について確約しておく必要はあります
・こちらのマニュアルを必ず読んで参考にしましょう
・申請様式はこちら
【上記の小規模事業主以外】
・休業等実施計画(変更)書(様式第1号)の提出が不要
・(2)の提出ステップはまるごとなくなり、計画届以外の書類は(4)の支給申請時に一緒に提出すればOK
→(1)が完了次第、休業に入れる
→「労使協定→休業→支給申請」のわかりやすい3ステップになった
( 雇用調整助成金(新型コロナ特例)|厚生労働省 より引用 )
(4)は支給対象期間末日の翌日〜2ヶ月以内(支給対象期間の初日が1/24〜5/31の場合は特例で8/31まで)に行うことで支給を受けられます。申請から振込までの間には審査が行われますので、早めの支給が希望の場合は早めの申請がよろしいかと思いますが、現在休業期間中であれば、申請はまだ少し先です。慌てずに準備を進めましょう。
支給申請先は、事業所の所在地を管轄する都道府県労働局またはハローワークとなります。なお、計画書の提出や支給申請は郵送で行うことができます。郵送先はこちら。
オンライン申請の準備も進められていますが、6/15現在、オンライン受付システムは不具合のため稼働が延期となっています。【6/15更新】
上記変更点に関する厚生労働省の発表内容はこちらをご確認ください。
申請様式について
申請様式のデータ・記載例がまとめてあるページはこちらになります。
下記、準備する順番で個別の申請様式にリンクを貼っていますが、日々URLが変わっているため、特定の時点でリンク切れになっている可能性があります。その場合は上記から該当の様式を探してみて下さい。
***
※これ以降は【小規模事業主以外】向けの説明となっております。※
1. 休業計画・労使協定【休業前】
休業前にやっておくことは、
・休業計画をたてる
・休業協定書を作成する
の2つになります。
■1−1. 休業計画をたてる
下記のような項目を決めます。
・休業の実施予定時期・日数等
・休業の時間数(原則、一日の所定労働時間)
・休業の対象となる労働者の範囲および人数
・休業手当の額の算定基準
■1−2. 休業協定書を作成する
1-1の内容をもとに休業協定書の作成を行いましょう。休業協定書は特に指定された様式はなく、各労働局より公開されている雛形をご利用ください(例として愛知労働局のものを記載します→ こちら)。
内容記載の上、事業主と労働者代表の署名・押印が必要です。
(雇用調整助成金ガイドブック(簡易版) より引用 【6/15更新】)
ここまで完了すれば、休業を行うことが可能です。
2. 雇用調整(休業)の実施
1で決めた内容通りに休業を実施しましょう。
3. 支給申請【支給対象期間末日〜2ヶ月以内に申請】
支給申請は支給対象期間末日の翌日〜2ヶ月以内(支給対象期間の初日が1/24〜5/31の場合は特例で8/31まで)に行う必要があります。
■3-1. 雇用調整事業所の事業活動の状況に関する申出書(申請様式特第4号)
・様式:Word、記載例
・内容を証明する添付書類:生産指標確認のための資料
→最近1ヶ月分及び前年同月分の売上高、生産高または出荷高を確認できる書類。既存の「売上簿」「営業収入簿」「会計システムの帳簿」など。写しでも可
■3-2. 支給要件確認申立書・役員等一覧(様式特第6号)
・様式:Word、記載例
・別紙の「役員等一覧」は「3-7.事業所の規模を確認する書類」で「役員名簿」を提出した場合は不要
■3-3. 休業・教育訓練実績一覧表(様式特第9号)
・様式:Excel、記載例
→判定基礎期間(賃金締切日の翌日から次の賃金締切日までの期間)ごとに作成する必要があります
→Excelはピンクのセルのみ記入してください(青色は自動計算)
■3-4. 助成額算定書(様式特第8号)
・様式(休業等の最終日が〜4/7):Excel、PDF、記載例
・様式(休業等の最終日が4/8〜):Excel、PDF、記載例
→判定基礎期間(賃金締切日の翌日から次の賃金締切日までの期間)ごとに作成する必要があります
→Excelのピンクのセルのみに記入してください(青色は自動計算)
→休業等の最終日が4/8以降の場合は追記した【パターンA】も利用可能、(1)〜(3)の記入方法は【A】か【B】いずれかに揃える
・(1)賃金総額
→【A】判定基礎期間の初日が属する年度 or 前年度の任意の月に提出した給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書「俸給給料等(01)」欄の「支給額」を記入
→【B】直近の労働保険料確定保険料申告書「⑧保険料・一般拠出金算定基礎額」欄の「雇用保険法適用者分」の額を記入
(労働保険年度更新申告書の書き方|給与計算の基礎知識 より引用 )
・(2)前年度1年間の1箇月平均の雇用保険被保険者数
→【A】前述した給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書「俸給給料等(01)」欄の「人員」を記入
→【B】各月末時点の雇用保険被保険者数の平均(小数点以下切り捨て)を記入
・(3)前年度の年間所定労働日数
→【A】下記いずれかの方法で算定
→休業前の任意の1か月における対象労働者数及び所定労働日数の加重平均により算定
→週休2日制(祝日等が労働日である場合)が大多数を占める場合は月22日
→週休2日制(祝日等が休日である場合)が平数を占める場合は月20日
→雇用形態等により所定労働日数が異なる労働者を雇用している場合は加重平均で算定
→【B】前年度の従業員1人あたりの年間所定労働日数を記入
→部署や勤務形態毎に当該所定労働日数が異なる場合は、下記のように按分する
(「様式特第8号記載要領」 より引用)
→休業手当を算定するための賃金の日割り計算をする際に、所定労働日数によらず、所定労働日数より大きな日数や暦日数を用いる場合は、固定で「365日」と記入
・(5)休業手当等の支払い率
→就業規則または休業等協定によって定められた、通常の賃金額に対する休業手当の割合(支払い率)を記入
→就業規則または休業等協定による定めのない場合
→実際の支払い率および記載する支払い率ともに100%とする必要があります
・(8)月間休業等延日数
「3-3. 休業・教育訓練実績一覧表(様式特第9号)」の⑧⑫から転記する
この様式の(1)(2)(3)に記載する情報を、マネーフォワード クラウド給与内の「雇用調整助成金申請サポート機能」を利用して整理することが可能です。
■3-5.(休業等)支給申請書(様式特第7号)
・様式(休業等の最終日が〜4/7):Excel、PDF、記載例
・様式(休業等の最終日が4/8〜):Excel、PDF、記載例
→判定基礎期間(賃金締切日の翌日から次の賃金締切日までの期間)ごとに作成する必要があります
→複数の判定基礎期間分を作成する場合、2枚目以降は①(6)、②、③、「◆判定基礎期間」のみの記入でOK
→Excelのピンクのセルのみに記入してください(青色は自動計算)
・①(5)賃金締切日
→賃金締切日が毎月一定期日で定められている場合、○で囲み日付を記入する
・①(6)対象労働者数
→判定基礎期間内の暦月の末日時点の「対象労働者」(※)の数を記入
→判定基礎期間内に暦月の末日が存在しない場合は判定基礎期間の末日で計算
・②(4)月間所定労働延日数
→すべての対象労働者の判定基礎期間における所定労働日の数の合計を記入
※ 休業・教育訓練実施事業所に雇用される雇用保険被保険者のうち、次を除いた者をいいます。
・解雇を予告されている被保険者、退職願を提出した被保険者、事業主による退職勧奨に応じた被保険者(当該解雇その他離職の日の翌日において安定した職業に就くことが明らかな者を除く)
・日雇労働被保険者である者
・判定基礎期間において雇用調整助成金と重複して受給することができない助成金等の支給の対象となる被保険者
■3-6. 休業協定書
・休業協定書は「1. 休業計画・労使協定」にて説明した通り
・内容を証明する添付書類:労働者代表の確認のための書類
→労働組合がある場合
→組合員数を確認できる「組合員名簿」などの書類
→労働組合がない場合
→労働者代表選任書
→決まった様式は特にありませんので、各労働局が公開している雛形をご利用ください(例として愛知労働局が公開している雛形を記載します→ こちら)
→「3-3. 休業・教育訓練実績一覧表(様式特第9号)」に労働者代表の署名または記名・押印があればこれらの提出は省略可能
■3-7.事業所の規模を確認する書類
・常時雇用する労働者の人数を確認できる書類
→「労働者名簿」および「役員名簿」などの書類
■3-8. 労働・休日の実績に関する書類
・各対象労働者の労働日・休日及び休業の実績が明確に区分され、日ごとまたは時間ごとに確認できる書類
→「出勤簿」「タイムカード」など
・シフト制、交代制または変形労働時間制をとっている場合
→「勤務カレンダー」「シフト表」など
■3-9. 休業手当・賃金の実績に関する書類
・休業期間中の休業手当として支払われた賃金の実績が確認できる書類
→「賃金台帳」「給与明細書」など、判定基礎期間を含め前4ヶ月分(賃金や手当の支払い方法が協定に定める方法と相違ないと確認できる場合は1ヶ月分)
→休業日に支払われた休業手当と、通常の労働日(時間)に支払われた賃金・手当等とが明確に区分されて表示されている必要があります(休業手当等の額と賃金の額が同額である場合は、区分されていなくてもOK)
■3−8、3−9の内容を証明する添付資料
・所定の労働日・労働時間・休日や賃金制度の確認のための書類
→「就業規則」「給与規定」「労働条件通知書」などの書類
・変形労働時間制、事業場みなし労働時間制または裁量労働制の場合
→上記に加え、労働組合等との協定書またはその監督署へ届け出た際の届出書の写し
4. 労働局による審査・支給決定・振込
お疲れさまでした! 🎉
ここまで完了したらあとは待つのみです。労働局による審査・支給決定を待ちましょう。
・労働局等から追加の提出を求められた場合は速やかに対応してください
・提出書類の控えは支給決定日から5年間保管する必要があります
おわりに
全体の流れをご理解いただき、少しでも申請作業を進めやすくなればという想いで本記事をまとめました。お困りのこと・解決できないことがあれば、下記もぜひ参考にしてみてください。
・まずは「雇用調整助成金ガイドブック(簡易版)6月12日現在版」を確認してみてください。ここに詳細はまとまっています【6/15更新】
・お問い合わせは各都道府県の労働局またはハローワークへ
・雇用調整助成金コールセンターもあります(0120-60-3999)
↑こちらはつながりにくい時間帯もあるようです
・よくあるお問い合わせ内容をまとめたFAQ(5月29日版)もあります
事業者の皆さまにおかれましては、様々な面で大変ご苦労されているかと思います。周りに頼れる方、こういった申請に詳しい方がいらっしゃればぜひ力を合わせて乗り切っていただきたいです。
マネーフォワードでは、新型コロナウイルス感染症対策に関する様々な取り組みを行っております。下記も合わせて参考になさってみてください。