【後編】マネーフォワードにおけるSaaS×Fintechの歩みと描く未来
マネーフォワードのSaaS×Fintechの歩みと、これから目指す未来を紹介するnoteの後編です!
前編では、マネーフォワード創業からのSaaS事業とFintech事業のそれぞれのサービスの発展について触れました。後編では、SaaS×Fintechサービスの誕生、そして未来についてお届けします。
前編をまだ読んでいない方は、ぜひ前編からご覧ください!
③SaaS×Fintechの始まり:データを価値に変えてユーザーに届ける
ー 2021年頃になると、いよいよSaaS×Fintechのサービスがリリースされますが、そもそもSaaS×Fintechの戦略はいつ頃作られたのでしょうか?
山田:SaaS×Fintechという言葉自体はまだ無かったですが、概念的には2016年頃からありました。元々Fintechは金融機関が持っていたデータをユーザー自身が自由に扱えるようにするというところから始まりました。しかし、SaaSに連携された金融データを使って会計の仕訳登録をしていただくところまでは機能として提供できていたのですが、それ以上の活用に広がらないという課題がありました。そこで、ベンダーである私たちがデータをさらなる価値に変換してサービスを提供することで、より便利さを実感してもらいたいと考えていたんです。
ー そこでリリースされたのが『マネーフォワード ビジネスカード』ですね。
山田:はい。『マネーフォワード クラウド会計』に蓄積されたデータを活用して与信審査を行い、ビジネスカードの与信限度という形でユーザーに届けられれば、それまで企業規模の問題などでカードが作れなかった企業にも価値を感じてもらえると考えました。
『マネーフォワード ビジネスカード』は当時海外で普及していた「Brex」という会社のビジネスカードを参考に検討していました。通常、法人カードは企業の財務状況や代表者の信用をもとに審査されることが多く、創業間も無い企業は信用性が低いためカードが作りづらくなりがちです。しかし「Brex」は銀行の残高を参照して与信を付与するため、創業したてのスタートアップでも口座に現金があればカードを作ることができ、多くの中小企業を救っていたんです。
冨山:『マネーフォワード クラウド会計』のデータを与信に使うという点では、『マネーフォワード クラウド資金調達』でトライしたことへの再挑戦ともいえますね。
山田:はい。『マネーフォワード クラウド資金調達』と違うのは、与信審査もマネーフォワード内で完結できるフローにしたという点ですね。SaaSのデータを活用してFintechサービスを提供するという部分まで自社内で完結できるようになりました。
また、当社のビジネスカードを使うと『マネーフォワード クラウド会計』や『マネーフォワード クラウド経費』に利用明細がリアルタイムで反映されます。経費精算業務を効率化するという目的でも便利に使っていただけるカードになりました。
ー ビジネスカードのビジネスは、これまで提供していたSaaSとは全く違う領域ですが、マネーフォワードにとっては、大きな挑戦だったのでしょうか。
山田:確かにこれまで提供してきたSaaSとは毛色が違いますが、ユーザーに価値を届けるという点では本質的には変わりません。どうしたら便利に使ってもらえるかを考え、プロダクトを作って届ける。SaaSと同じ流れです。金融サービスなので、資金の回収など一定のリスクが発生する可能性はありますが、対策をすることで極力リスクを削減することができます。
ー 2023年になると、Biz Forwardで提供している『SHIKIN+』と『マネーフォワード クラウド会計』が連携され、金融サービスとSaaSの連携が進みます。これが初めてのグループ会社間でのプロダクト連携ですが、どのような流れで連携が決まったんですか?
冨山:マネーフォワードケッサイを創業してから6年が経ち、ファクタリングの審査に関しても知見が溜まってきました。さらに、2021年には三菱UFJフィナンシャル・グループ2社との合弁会社「株式会社Biz Forward」を立ち上げ、中小企業をターゲットにファクタリングサービスの提供を開始しています。より中小企業の資金繰り改善に一歩踏み込んだ支援をしたいと考え『マネーフォワード クラウド会計』との連携を始めました。
『マネーフォワード クラウド会計』のユーザーはBiz Forwardのファクタリングサービス『SHIKIN+』と連携することで、審査書類の提出を簡略化することができ、より簡単に資金調達が行えます。
山田:SaaSとの連携以外にも、マネーフォワードケッサイの知見は活きています。先ほどお話した『マネーフォワード ビジネスカード』も、直接的に繋がっている部分はありませんが、リスクコントロールのあり方やKPIの立て方、与信ロジックの開発などはマネーフォワードケッサイのやり方を参考にしています。マネーフォワードケッサイが2017年からファイナンスサービスに取り組んできたというのは、マネーフォワードグループにおいて大きな強みになっていると思います。
④次の「SaaS×Fintech」へ:業務効率化と資金繰り改善の両方を叶える
ー SaaS×Fintechにおけるマネーフォワードならではの強みはどんなところにあるのでしょうか。
冨山:新しいサービスを作っても、使ってくれる人がいなければ始まりません。その点、マネーフォワードは2012年の創業からサービス提供を続けてきており、『マネーフォワード クラウド』は30万を超える事業者に使っていただいています。すでに、多くの顧客基盤があるというのは大きな強みなのではないでしょうか。
山田:マネーフォワードがグループ全体でSaaSもファイナンスサービスも両方行っているというのも強みだと思います。両方のサービスを提供しているからこそ、掛け算をした際により柔軟にサービス設計を行うことでき、ユーザーに良い体験を届けやすくなると考えています。
ー これからSaaS×Fintechは、どのような世界観を目指していきますか?
山田:やはり決済に入っていくのはすごく重要だと思っています。資金繰り改善は中長期的なチャレンジとして考えていますが、『マネーフォワード クラウド資金調達』の失敗から、直接お金を貸すということの難しさは知っています。ただ、資金繰り改善は融資以外にも方法はあると思うんです。マネーフォワードケッサイのファクタリングもそうですが、事業経費を支払うタイミングを1ヶ月遅らせるとか、請求書を銀行払いしていたものをカードで支払うだけでも約1ヶ月キャッシュアウトを遅らせることができます。これらも立派な資金繰り改善です。
このように、融資以外の方法での資金繰り改善を色々チャレンジしたいと思っていて、そのためには企業の支払うという行動の間に入ることが重要です。そのために『マネーフォワード ビジネスカード』を始めましたし、ビジネスカードで払えるものを増やしていく過程で、銀行振込指定の請求書をカードで払える「カード決済機能」を提供しています。
冨山:マネーフォワードは、SaaS上でのお金の見える化のフェーズから始まり『マネーフォワード ビジネスカード』を通じてお金の流れに入っていくフェーズまで来ました。2012年の創業時から着々とステップを踏んで、ようやく企業間決済自体をより便利に変えていくというところに着手するタイミングになったと感じています。
山田:そうですね。もちろん、資金繰り改善だけでなく、決済自体の利便化についても取り組んでいきます。『マネーフォワード クラウド』に送金機能を内包することで、バックオフィス業務と決済業務との分断を解消し、支払まで一気通貫したサービスの提供を実現していきたいと思っています。
今まで私たちは業務効率化と資金繰り改善を別々に捉えすぎていた面がありましたが、本来は業務効率化の過程で資金繰りが改善するという状態こそが最も良い体験だと考えています。業務効率化の中に資金繰り改善を組み込むという体験を、サービスに当てはめると、SaaSの中にFintechを組み込むSaaS×Fintechに繋がります。これからもSaaS×Fintechの思想でプロダクト価値を向上させていきます。
ー ありがとうございました。
マネーフォワードのSaaS×Fintechの取り組みについてはこちらのnoteもぜひご覧ください!
あとがき
当初信頼されていなかったFintech。そんなFintechのイメージが変わった転換点を聞いたところ、明確な転換点は特に無く、エンジニアやセールス、マーケティングが一体となって機能を改善したり、CM等で認知度をあげたりするといった、細かな活動の積み上げで信頼いただけるようになったと話してくれました。
同じように、SaaS×Fintechの歩みも決して順風満帆ではなく、失敗も含めた創業からの挑戦の積み重ねが関連し合って、サービスができています。全てが過去から繋がっているということを実感できたインタビューでした。
マネーフォワードのSaaS×Fintechはまだ道半ばです。これからもユーザーのみなさんに便利に使っていただけるサービスを届けていきます!