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プロジェクト型の原価計算をピュアクラウドで実現~マネーフォワード クラウド個別原価

マネーフォワード クラウドのモノづくりのリアルを、マネーフォワードビジネスカンパニーCSOの山田一也がその中心人物たちとの対談で解き明かしていく「CRAFT WORKS」マガジン。

今回は、2023年2月27日に正式リリースとなった「マネーフォワード クラウド個別原価」の開発の舞台裏についてじっくり語ってもらいました!

左:山田 一也(やまだ かずや)
株式会社マネーフォワード 執行役員
マネーフォワードビジネスカンパニーCSO

中央:松岡 隆之(まつおか たかゆき)/TAKA
株式会社マネーフォワード
マネーフォワードビジネスカンパニー クラウドERP本部 プロダクト開発部
「マネーフォワード クラウド個別原価」プロダクトマネージャー

右:上田 祥太(うえだ しょうた)/Piyons(ぴょんす)
Money Forward Vietnam Co., Ltd.
「マネーフォワード クラウド個別原価」プロダクトマネージャー

マネーフォワード クラウド個別原価とは?

山田:「マネーフォワード クラウド個別原価」のリリースお疲れさまでした!まずは「マネーフォワード クラウド個別原価」について概要をお話いただけますか?

TAKA:「マネーフォワード クラウド個別原価」は、システム開発/IT業、クリエイティブ業、士業・コンサルティング業、広告業といった、プロジェクトごとの原価計算を行う必要がある企業の個別原価管理をラクにし、早く正確な月次決算の実現をサポートするサービスです。

原価計算業務は最終的には経理の方が行う一方、どの従業員がどのプロジェクトでどれだけ稼働したかという工数情報は現場側でインプットいただく必要があります。

「マネーフォード クラウド個別原価」は、経理側の原価計算と現場での工数入力の両面をカバーしていることが特徴のサービスです。

山田:ぴょんすはプロダクト開発の立ち上げ時から関わってもらっていますが、個別原価領域では、どんな課題やユーザーペインがあると感じていましたか?

ぴょんす:私はこのプロダクトに関わって初めて「個別原価」という領域を勉強したんですが、個別原価自体の仕組みがとにかく複雑で難しく、しかも経理だけで完結する業務でなく、実際にプロジェクトに関わるエンジニアからの工数情報を収集する必要があるという点で、運用としても複雑な業務だということを感じました。

山田:そうですよね。会計士資格を持っている私でも、個別原価はできれば勉強したくないくらい難しい分野だと思っています。でも、そこに本当に真摯に取り組んで、頑張ってキャッチアップしてくれてたなと思います。

TAKA:個別原価は、これまでピュアクラウド型のサービスとして対応するプロダクトがほぼなかった領域です。なので、表計算ソフト上で関数やマクロをゴリゴリに組んで、属人化した仕組みでまわしていらっしゃる企業が多いんですね。

山田:マネフォも実際そうですよね。Google スプレッドシートを駆使してプロジェクトごとの原価計算を行っているので、現実問題として、終了済のプロジェクトに工数が付いてしまうといったミスも発生しますし、手入力による手間も多い。

こういった個別原価管理の課題はほかの会社でも起きているのではないかというのが、「マネーフォワード クラウド個別原価」の開発を始めたきっかけでしたよね。

「プロジェクトへの間接費の配賦」は、個別原価計算における根強い課題

山田:昨年の12月に提供開始のプレスリリースを出してからは、特に多くのお客様とお話ししてきたと思いますが、どんな反応をいただいてますか?

TAKA:さきほど山田さんがマネフォでも苦労したと言っていた、終了済のプロジェクトに工数が付いてしまう問題は、まさにお客様の困りごととして良くお聞きする話で、「終了済プロジェクトへの原価計上ミスを防止できる仕組みはいいね」と言っていただけることもあります。

山田:終了済のプロジェクトに原価が発生してしまうのは、監査上もNGですからね。

TAKA:ほかには、オフィスの賃貸料や水道光熱費といった間接費(共通費)の配賦に苦労されている企業が多い印象なので、そこがワンクリックでできる点は評価の声をいただいています。

ぴょんす:間接費(共通費)の配賦課題は、本当に良くお聞きします。複雑なこともあり、そもそも間接費をプロジェクト原価として考えずに、直接費だけを計算している企業もいらっしゃいました。

なので、「これで間接費も計算できるね」という声をいただけると、機能として実装できてよかったなと思います。

TAKA:あとは単純に「これでエクセルから脱却できる」という感想をいただけることも多いですし、現場での工数管理と経理での原価計算が一体のサービスになっている点で、「こういうプロダクトは今までなかった」というポジティブな驚きのリアクションをいただくこともあります。

「マネーフォワード クラウド個別原価」に込めた思い

山田:ここからは、プロダクトリリースまでの道のりについて聞いていきたいと思います。プロダクト企画の段階ではぴょんす一人で進めてもらいましたが、どんな気持ちでしたか?

ぴょんすはじめは不安しかなかったですね(笑)個別原価のお話をいただく前は、HR領域のPdM(プロダクトマネージャー)をしていたので、経理財務領域のドメイン知識も不足していました。なので、はじめの2ヶ月くらいは座学で「原価計算とは」を学んでいました。

山田:そうですよね。PdMとして原価計算に関してお客さんと会話できないと話にならないということで、まずはインプットに集中していましたね。

ぴょんす:そうですね、正直くじけそうになったこともありましたが、個別原価の領域でペインを感じている方がいて、プロダクトへのニーズがあることもわかっていたので、「この領域でいける」という根拠のない自信もありましたし、不便を感じている方々にプロダクトを届けたい一心で進んできた感じです。

山田:企画に入ってもらったのは、ちょうど新卒4年目に入る頃でしたよね。

ぴょんす:はい、もともと海外でエンジニアと一緒に働きたいという思いも持っていたので、山田さんに指名いただいて素直に嬉しかったですし、絶対にいいプロダクトを作るんだという思いでした。

山田:そして、一昨年の11月に中途入社したTAKAさんに、二人目のPdMとして入っていただきました。採用面接で私と話した内容、覚えていますか?

TAKA:もちろんです。前職では大手企業様向けパッケージベンダーに10年ほどいたんですが、原価計算にも関わる中で、「ピュアなクラウドによって個別原価をもっとラクにできる価値を届けたい」と密かに思っていたんです。すると面接で山田さんから「実は個別原価のプロダクト開発を進めていてね」というお話を特別に教えてもらいまして(笑)巡り合わせを感じて迷いなく入社を決めました。

山田:TAKAさんが10年積み上げてきた原価計算領域のノウハウを注入してくださって、そこにマネフォの開発力やデザイン力を掛け合わせることで、本当にいいプロダクトになったなと思います。

TAKAさんが入って特に良かったなと思うのは、この分野で長く仕事をされてきたので、個別原価のペインを絶対解決するんだという強い思いを持っていることです。そんなTAKAさんも合流したチーム全体が、ユーザーの課題を解決するために一丸となっていったのが、すごく素敵だなと思っていました。

日本とハノイとの2拠点PdM体制での開発

山田:今回、マネーフォワードとマネーフォワード ベトナムの共同開発で、かつメインのエンジニアはベトナムのハノイに在住という2拠点体制でした。まずは、二人の役割分担から教えてもらえますか?

TAKA:私は日本で主にビジネスサイドを担当していました。社内の営業やマーケと方針を議論したり、お客様とのMTGを通じて様々な声をお聞きしたりといった部分です。

ハノイに駐在するぴょんすには、日本における個別原価業務知識をエンジニアに伝えながら、プロダクト実装していく部分を担ってもらい、私とぴょんすは常に情報連携しながら進めてきました。

ハノイ拠点のメンバー

山田日本とハノイの共同開発で、各拠点のPdM2名体制というのは、マネフォでも初の試みだったと思いますが、実際にやってみてどうでしたか?

ぴょんす:まず率直に、「二人いたことで助かったな」と思います。当たり前ですが、ゼロからプロダクトを立ち上げるとなると、本当にやること・考えることがたくさんあって、その中でビジネスサイトとプロダクトサイド、日本とハノイで役割分担しながら進められたからこそ、リリースまで漕ぎ着けられたと思っています。

個別原価の知見を持っているTAKAさんと仕様の壁打ちをたくさんできたことで、プロダクトの精度も上がりました。

TAKA:今回、開発は100%ハノイでの対応だったんですが、プロダクトリリースに向けては、開発チームの立ち上げや、エンジニアのエンゲージメント向上がとても重要な要素でした。

開発期間が1年を超えるので成果が見えるのも先になりますし、ハノイから見ると日本のユーザーの顔が見えづらいので、エンジニアにとってモチベーションを保つのが難しい環境だったと思うんです。

その点、ぴょんすが、現地で勉強会を開催したり、「ここが踏ん張りどころだよ」「お客さんが待ってくれているよ」「このプロダクトは意味があるんだよ」と声をかけたり、きめ細かいマネジメントをしてくれたお陰で、ものすごくいいチーム状態で開発を進められたと感じています。

山田:2拠点・2PdM体制というのはこれからのマネーフォワードの開発体制として増えてきそうですし、今後のお手本になるような役割分担とチームビルディングができていたんじゃないかなと思います。そして今回、実はハノイ拠点でのファーストプロダクトなんですよね。

ハノイ拠点の立ち上げをしつつ、開発もスタートというのはどうでした?

ぴょんす:ハノイ拠点長が同期メンバーなんですが、二人で相談しながら採用計画を立てたりしてきました。もちろん不安もあるし大変なことも多かったんですが、今振り返っても楽しかったです。

(ハノイ拠点立ち上げについては、こちらのnoteをご覧ください!)

山田:現地のエンジニアとのコミュニケーションで難しいところ、工夫していることはありますか?

ぴょんす:そうですね、やはり細かい仕様をどう分かりやすく伝えるかは、いまだに課題です。原価計算ロジックは、日本語で説明することすら難しい領域ですが、それをベトナム人エンジニアにいかに間違いなく伝えるのかは難しいポイントでした。

計算式で伝えるのか、絵を描くのか、ひたすら話すのか、まだこれだという解は見つけられていないですが、まずは直接コミュニケーションを取ることを意識しています。

TAKA:紅茶コミュニケーションも効いているんじゃないですかね!

みんなタピオカミルクティみたいな紅茶が好きらしく、ぴょんすや同期の拠点長、個別原価のメンバーが他のメンバーにサプライズでプレゼントすることで、一気にパワーがみなぎり、開発ペースが上がるそうです(笑)

私も2回ほどハノイオフィスに出張したことがあるんですが、みんなプロ意識もエンジニアリングに対する興味も高いし、新しいプロダクトを生み出そうとする気概に溢れていて、本当に信頼できるいいチームだと感じました。

ハノイ拠点メンバーと
プロダクトリリース時の様子

これからどんなプロダクトにしていきたいか

山田:では最後に、これからどんなプロダクトにしていきたいか教えてください。

ぴょんす:まだリリースしたてのプロダクトなので、ここからがスタートだと思ってます。

1stリリースでは、まずは正しくラクに個別原価計算できる点にフォーカスしたプロダクトなんですが、まだまだ周辺領域が広い分野で、例えば、原価実績が出た後の意思決定につなげていく部分もカバーすることもできるかもしれない。正確な原価計算の先に、どんな価値を届けていけるのかを考えていきたいと思います。

TAKA:原価計算には、給与や工数データ、その他の散らばってる発生費用のデータ収集が経理の方の負荷になっている現状があります。なので、そういった周辺情報をいかにラクにつなげていくかはコンポーネント型ERPの特徴を生かして積極的にやっていきたいなと思います。

また、このプロダクトの特徴としては、経理の方だけでなく、現場のエンジニアが工数を入力しますし、原価を管理する経営層や現場リーダーの方々にも価値を届けられるプロダクトですので、レポートの拡充も進めていきたいです。

山田:めちゃくちゃ楽しみです。

実はマネーフォワードでも今もGoogle スプレッドシートで管理しているので、私もそれをみて承認作業を進めているんですが、リアルタイムでどれだけのお金がかかっているのか、最新状況を正確に反映したものなのかは、やっぱりつかみづらいんですね(笑)

ぴょんす:今マネフォで使っている原価計算のスプレッドシートの原型は、山田さんが作ったんですよね?

山田:そうですね。当時からいろいろな改善が加えられて、今はプロジェクト型の原価をマネジメントするには過不足ない情報を網羅しつつ、効率的に計算をできるような仕組みになっているなと感じます。

実は、「マネフォでの原価計算はどうやっているんですか?」というのは、投資先や関係会社の方から質問をいただくことも多いんです。もちろん聞かれた場合にはお答えするんですが、おそらく同じ悩みをお持ちの会社は多いんだろうと思うんですね。

「マネーフォワード クラウド個別原価」は、これまでマネフォ自身が個別原価に対して試行錯誤してきたノウハウが詰まったSaaSプロダクトでもあるので、これを日本全体に広めていくことで、プロジェクト型の原価計算に対して悩んでいる方の解決策になればいいなと考えています。

そして、私たちは、SaaSビジネスですごく成長させていただけた会社なので、このプロダクトをご提供することが、SaaS業界への恩返しにもなれたらと思います。

TAKA:これからは、もちろんマネフォでも「マネーフォワード クラウド個別原価」を導入していくので、マネフォでの原価管理がラクになるはずです。そろそろ横のチームで使い出したりするはずなので、ドキドキしますけど、ダイレクトに反応が来るのは、マネフォのドッグフーディング文化のいいところでもあるので頑張ります!

山田:そうですね、社内で使っていくのも楽しみです。今日はありがとうございました!

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