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マネーフォワード クラウド人事管理 リリースまでの道のりとこれから実現していく世界

マネーフォワード クラウドのモノづくりのリアルを、CSOの山田一也がその中心人物たちとの対談で解き明かしていく。

「CRAFT WORKS」マガジン、今回の対談は、2021年7月26日にリリースとなった新サービス「マネーフォワード クラウド人事管理」の開発の舞台裏についてじっくり語ってもらいました!

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左:山田 一也(やまだ かずや)
株式会社マネーフォワード 執行役員
Money Forward Business Company CSO
右:辻 修平 (つじ しゅうへい)
株式会社マネーフォワード
Money Forward Business Company
HRソリューション本部
Product Development部 クラウド人事管理グループ

山田:まず「マネーフォワード クラウド人事管理」っていうプロダクトがどういうものかわからない読者の方もたくさんいらっしゃるので、まずは、人事管理がどういうサービスで、誰のどういう課題を解決するサービスなのかをぜひ教えていただけると。

辻:クラウド人事管理というサービスは、従業員情報を管理する製品で、名前の通り人事管理、従業員管理のサービスです。

従業員管理には大きく三つのステップがあり、一つ目が従業員の情報収集のステップ、二つ目がそのデータを蓄積するステップ、三つ目が他の製品でそのデータを使う、もしくはそれを用いて分析や仮説検証を回すステップと定義しています。

クラウド人事管理では、データの「収集」「蓄積」と、クラウド給与・勤怠などのマネーフォワード クラウドのHRソリューションを担うプロダクト群とのデータの「連携」の課題をまずは解決していきます。

山田:収集して、それを貯めて、それを活用するという3段階を一気通貫することで、HR領域を支えていくプロダクトということですね。

データを収集する部分から話を聞けたらと思うんですけど、データを収集する部分でユーザーはどういうペインを抱えているんでしょうか?

辻:実際に企業にヒアリングしていく中で見えてきたこととしては、まだまだ紙での回収が多かったり、デジタルのワークフローシステムを使っていたとしても、サービスが異なることから、収集したものをエクセルなどで変換して他のサービスに取り込んだり、サービス間で転記が必要な作業がかなり多く残っているという現状でした。

また、頑張って収集してチェックまでしたのに、他のサービスにデータを連携するときに手作業での加工や入力が必要なので、それがミスの原因となってしまうことも多いようです。

山田:紙で収集しているのは入社時の情報収集でしょうか?

辻:はい。入社時に情報を収集する際に、紙に直接記載してもらったり、それを郵送してもらったりしている話を聞いて、それは大変だなと思いました。

ヒアリングさせていただいた、クラウド給与などを利用しているお客さんの中でも、10社中、5~6社の会社がそういった運用をされていたので驚きがありました。

山田:情報の収集は、入社のときに限らず、在籍中に引っ越しやご結婚のようなライフイベントが発生すると会社に何かしらを提出すると思うんですけど、入社時に紙で運用しているとそこもやはり必然的に紙で運用されている会社が多いのかな?

辻:仰る通りですね。人事管理と給与計算のツールが連携していないことが多いので、情報を収集した先で他のサービスに連携するところがうまくいってないケースが多いと感じました。

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山田:データを溜めていくステップではどんな課題があって、どうやって解決していこうと考えていますか?

辻:データの蓄積に関しては、今後実装予定の歴管理機能がメインになってくると思っています。

一度登録さえすれば過去の情報を閲覧することができて、まだ決まってない未来のために登録予定のデータを保存しておいたり、過去から未来へ繋がる従業員のライフイベントを含めたデータを蓄積し、それをあとから抽出できるようになっているべきだと思っています。

山田:それは三つ目のステップのデータの活用を見据える、ということですよね?

辻:はい。例えば「1年前の従業員情報はどうだったのか?」とか「1年前、この人はどこの部署にいて、そのときの正社員の割合はどれぐらいだったのか?」など、戦略人事的な観点においても活用できると考えています。

山田:データを蓄積する、というと最新の情報を蓄積していく、と思いがちなんですけど、言ってくれた通り、過去・現在・未来の3軸に渡ってデータを蓄積していく、というのが、その後の活用を見据えると本当にやらないといけないことだし、まさにそこのペインを解決していくのがこのクラウド人事管理っていうサービスですよね。

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山田:実際、うちの会社も人事異動や組織改編が多いじゃないですか。そういう会社って、都度、従業員マスタとか組織図を更新していて、それだけでも大きなペインを抱えてると思うんですよね。

かつ、勤怠締めや給与計算のタイミングによっては、それぞれのシステムが欲しい時点の情報が別々であることも多いと思っていて。

そういった過去・現在・未来について、一連の流れでデータを溜めていけるというのは、いろんなユーザーの課題を解決できるポテンシャルを感じますし、僕も実際にサービスを触ってみてそう思いました。楽しみですね。

ちなみに、リリース時点ではどんなサービスとの連携が実装されているのでしたっけ?

辻:リリース時点ですと、クラウド給与とクラウド勤怠に連携しています。入社手続きで収集した情報のうち、名前や交通情報、住所、社会保険など、給与計算や勤怠管理に関わる基本情報を連携することができます。

山田:今は2サービスとの連携ですが、今後どういった情報の連携を増やしていこうと考えていますか?

辻:検討中ではありますが、2つあって、まずは従業員の人事異動情報の部分ですね。

山田:そうですよね。マネーフォワードクラウドにはいろいろなサービスがありますが、それぞれでワークフローの経路を設定したり、それぞれで組織情報をメンテしないといけないのがすごく大変と言われることが多いので、そのあたりをクラウド人事管理で中央集権的に管理できるようになって、いろんなサービスに連携していけるようになると、マネーフォワードクラウド全体のUXが上がっていくなと思うのでそれはすごい楽しみですね。

あともう一つは何ですか?

辻:もう一つは、入退社のタイミングというのは人事労務の方々に限らず、情報システム部門や経理など、広くデータを連携する必要があるので、そういった方々のペインも同時に解消できるようなサービスになっていけたら夢が広がるなと思っています。

山田:入社、退職の時って人事労務だけが関与しているわけじゃないので、クラウド人事管理を起点に、その業務に関わるすべてのセクションのペインを解消していけたら、それはすごく価値があるし楽しみですよね。

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山田:このプロジェクト自体がスタートしたのはいつぐらいでしたっけ?

辻:僕が異動してきたのが昨年の2月1日ですね。

山田:最初の数ヶ月はどんな取り組みをされていましたか?

辻:最初はキャッチアップするのに本当に必死で。。まず、プロダクトマネージャーって何だろう?みたいなところから学び始めました。

それと、時間があればとにかくユーザーの課題の解像度を上げるために、たくさんの会社さんにインタビューしたり、時間が空けば人事労務の本を読んだり、マネーフォワードの労務の方に話を聞きに行ったりしていました。

そういう学びの時間から作成したユーザーストーリーマッピングを実際に見てもらいながら、ペインのある業務上のポイントを教えてもらうことで業務の把握を進めていきました。

山田:実際にインタビューして、ユーザーさんのお話を直接お伺いして、どんな印象を持ちました?

辻:課題があることは把握できたものの、その解像度が低くて、それをどう解決していくのか、とか、それをどう解決すればビジネスになるのかがわからず、MVP(Minimum Viable Product)をどこに設定するべきかすごく悩んでた記憶があります。

山田:それが固まってきたきっかけはありましたか?

辻:人事管理において先行しているサービスを導入している会社の労務の方とお話をしていたときに、サービス間のデータの転記などの課題以前に、入社手続きにおいてもまだまだ課題やペインがあることを教えてくれて、それを理解できたときにマネーフォワード クラウドが人事管理をリリースする価値が見えて、いけそうだなという感覚を持ちました。

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山田:クラウド人事管理の開発チームはどんなチームですか?

辻:ベテランの層と若手の層に分かれていて、真ん中の層がいないチームでしたね。若くて勢いはあるけど、ベテランの方がバランスをしっかりとりながら進めてくださったと思います。

山田:すごくバランスのいいチームですよね。お互いに刺激し合えていて、新卒のメンバーがエース級の活躍をされたり、ベテランの設計力にものすごく学びがあったりしたのではないかと思います。

マネーフォワードのプロダクトマネージャーは、以前の職種がセールスやカスタマーサポート、カスタマーサクセスなど、いろんなバックグラウンドの人が多いのですが、エンジニアキャリアからのプロダクトマネージャーへの挑戦も今後増やしていきたいし、増やしていけるといいなって思っています。

エンジニアバックグラウンドを持っている辻くんが、プロダクトマネージャーをやって良かったと思うことはありますか?

辻:開発チームからの信頼は比較的得やすかったと思います。あと、コミュニケーションは取りやすかったですし、どうしたら開発者が集中できる時間を増やせるかを意識して動けたと思います。

山田:なるほど。いいですね。逆に、「これは本当に大変だった」「苦労した!」っていうことは、、、

辻:めっちゃありますね(笑)

山田:いくつか代表的な話を教えてください(笑)

辻:序盤の話だと、スクラム開発でのプロダクトオーナーの立場や業務についての認識が揃ってなくて、開発者から「え?」みたいに言われたシーンがありました。

なんかそれが悲しすぎて、その土日でスクラムの本を5冊買って、涙流しながら読んだみたいなことがありました。毎週必死でしたね。

今週はスクラムのこれが足りなかったとか、今週は人事労務のこの知識が足りなかったとか、常に何かしらの問題が起こるので、序盤の半年は毎週末反省しながら過ごしていました。

山田:辻くんだけじゃなくて、チーム全体の学習意欲が高いというか、ラーニングしていけるチームだな、というのは外から見てて思います。当時も、本当に日に日にチームが良くなっていってる感覚がありました。

そういうことの積み重ねがチームビルディングに繋がっていったという印象があるのですが、具体的にはどんな取り組みをしていましたか?

辻:一番初めに、チームビルディングしていきたいよっていうポエムを書きました。共通の目標を持って、相互に理解し合った中でプロダクトを作っていきたいという思いがあったので。

メンバーの関係が悪いと、それがプロダクトに出てしまうという過去の経験があったので、まずはチーム間の理解を深めて同じビジョンに向かって進んでいこうと。

例えばでいうと、人事の方に相談させていただいて、FFSを用いながら相互理解のワークショップをしていただいたりとか、定例のミーティングでチームで目標を考える機会を持っていただいたりとかですね。

あとは、クラウド人事管理チームで贈り合ったピアボーナスの投稿を、「今週はこういう投稿がありました!」みたいに週次で取り上げたりしてましたね。

山田:あのコーナーいいよね。

辻:そうですね。もう大人気コーナーです(笑)

山田:まさに「Respect」のカルチャーを体現している良い企画だったなって思います。あとこの前の全体共有の場でも話されてましたけど、モグモグ会でしたっけ?

辻:モグモグ会!そうですね、お菓子を食べる会ですね。

山田:あのモグモグはお菓子を食べるモグモグから来てるんですか?

辻:そうです。そうです。

山田:あれもやっぱり相互理解の?

辻:そうですね。あれも相互理解のためのものです。

山田:ちなみにどんな会話するんですか?

辻:なんか、一個だけ覚えてるのが、iPhoneにカバーを付けるか付けないかっていう議論がありました。iPhoneのデザイン観点だと、これはカバーはつけない方がいいんだ、みたいな。

山田:そのプロダクトの作り手の意思を汲み取るべきかっていうことね。

辻:そうですね。そんな話をしてましたね、なんか割と真面目な。

山田:まあ、、無理やりプロダクト作りに繋げるとすると(笑)プロダクトがリリースされたあとも、どういう世界を実現したいかという思いを伝えていくのはすごく大事だということですよね。

辻:大事だと思います!

山田:あんまり押し付けじゃ駄目だけど、こういう世界になると世の中もっと良くなるっていう思いを持ちながら、これからきっとプロダクトは成長していくと思うので、すごい楽しみだなって思ってます。

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山田:今まさに今、リリースされてから既にもう数十件受注が入ってると思うんですけど、実際にプロダクトが使われ出して何か変化や学びはありましたか?

辻:そうですね。まだそこまでフィードバックはいただいてないのですが、本番にエラーが出てくる時期だと思うのでちょっとヒリヒリしてますね。

山田:まだ嬉しさよりも心配の方が大きいですかね?

辻:そうですね。今はもっとフィードバックをいただく回数を増やさないといけないなと思っていて、今後機能をいろいろ増やしていく中で、その機能がお客様の課題を解決できているのかの解像度をあげるために、お客様の声をたくさんいただけるような仕組みを考えていたりします。

山田:まさに次はプロダクトマーケットフィットの段階ですよね。

最後に、人事管理って、HRの基盤になるようなプロダクトですが、今後HRソリューション全体の観点で、辻くんがこういう世界を実現していきたいとか、今こういうことを考えてるとかあればぜひ教えてください。

辻:クラウド人事管理を作り始めるときのミッションが、「人事管理の業務領域」において、手書きや転記によるミスやチェックの作業をゼロにしていくことだったのですが、まだまだ社会全体に向けてはソリューションを提供できていないと思うので、どんな領域においても手書き自体が不要になるような、広く世の中に影響のある課題を少しずつでも解決していければ良いなと思っています。

山田:そうですね。マネーフォワードクラウド内の連携だけじゃなくて、マネーフォワードクラウド以外のSaaSとの連携もとても楽しみだなと思います。

Connected HRという思想は、マネーフォワードクラウドだけじゃなく、外部のSaaSも交えて、HRの業務効率を改善していくものだと思うので、そういう世界をどんどん実現していってもらえるといいなって思っています。