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企業の成長を後押しするプロダクトでありたい ~マネーフォワード クラウド債権請求

マネーフォワード クラウドのモノづくりのリアルを、CSOの山田一也がその中心人物たちとの対談で解き明かしていく。

「CRAFT WORKS」マガジン、第四回目の対談は、2021年6月7日にリリースとなった新サービス「マネーフォワード クラウド債権請求」の開発の舞台裏についてじっくり語ってもらいました!

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左:山田 一也(やまだ かずや)
株式会社マネーフォワード 執行役員
Money Forward Business Company CSO
右:後藤 佑太(ごとう ゆうた)
株式会社マネーフォワード
Money Forward Business Company
経理財務ERP本部 プロダクトオーナーグループ
Money Forward Vietnam Co., Ltd

マネーフォワード クラウド債権請求リリースの背景

山田:マネーフォワード クラウド債権請求のリリースお疲れさまでした!

後藤:ありがとうございます!

山田:すでに多くの方に利用していただいている「マネーフォワード クラウド請求書」と「マネーフォワード クラウド債権請求」にはどんな違いがあって、どういう狙いでサービスを作ったのか、一通りお話いただけますか?

後藤:はい。似ているところから先にお伝えしてしまうと、どちらも請求書をクラウドで発行し送ることができるサービスです。

そして、明確に違うのは「使っていただきたいお客様」です。「マネーフォワード クラウド請求書」は取引量がそこまで多くない小規模な事業者に使っていただきたいサービスで、「マネーフォワード クラウド債権請求」はIPO前の企業や中堅企業などの取引量の多い事業者に使っていただきたいという思いがあります。

そこには、同じ請求書発行業務において、お客様の規模によって実現したいことや使い方が大きく違う、という背景があります。

例えば小さい小規模な事業者だと、かっちりとしたフローを通すのではなく、少ない工数で請求書発行できることへのニーズが多いのですが、中堅以上の企業では、内部統制に準じたフローに沿って請求書を発行したいというニーズが多くあります。

そういったニーズの違いに応えるため、プロダクトを分けて提供することになりました。

「マネーフォワード クラウド債権請求」では、案件の管理や売上の計上、請求書発行後の残高管理や消込まで、債権の請求にまつわる一連の機能を提供しています。

山田:サービス名に、「請求」だけではなく「債権」という言葉を入れたのはそういったところに由来しているのですか?

後藤:おっしゃる通りです。帳簿の発行に特化したサービスにはしたくなくて、当初、クラウド債権管理という名前が検討されたほどです。

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成長する企業の味方でありたい

山田:リリースして約2ヶ月経ちましたが、お客さまの声を実際に聞いてみてどうですか?

後藤:正直に言うとポジティブなものもネガティブなものもあります。ポジティブなところで言うと、サブスクリプションビジネスのお客様は特に売上の按分計上や、分割請求書の一括作成の機能にかなり喜んでくれています。

一方で、どうしてもまだ機能が出揃っていないところがあるので、そこがネックで導入にまで踏み切れない事例もあり、悔しい思いをしているところではあります。

山田:なるほど、あともう一歩っていうところですね。でもコンセプトを評価していただいているのは嬉しいですよね。

後藤:本当に嬉しいですね。今までの債権管理をするシステムもしくは業界の大手さんが作っている債権管理系のシステムは、請求書を分割で一気にパッて作れますとか、売上の分割をパッてやりますというようなシステムってそれほど多くないのではないかと思っています。

なので、その利便性を評価していただけたことで、僕らの仮説が正しかったという確信や自信みたいなものに変わりました。

山田:新しいビジネスにチャレンジして、新しい請求の業務フローを取り入れていかないといけない事業者のすごく強い武器になっていくと思うので、そういった評価をしてもらえると、マネーフォワード クラウドERPの「変化をおそれない企業のための、進化しつづけるERP」というコンセプトにも合っていて、とても良いなと思いました。

後藤:企業が成長しても大丈夫、というシステムを整えるのもそうですが、成長を後押ししてあげるような、もっと端的に言うと売上を伸ばしてあげるような仕組みも必要なのではないかと思います。

そういったことができてこそのマネーフォワードだし、それを実現できる可能性があるサービスのひとつが債権請求だと思っています。

山田:本当にその通りで、弊社でも事業が成長するにつれて、請求書発行事務のバックオフィスが後手後手になってしまってすごく苦労した思い出があります。そういうシステムが世の中にあると、成長する企業の強い味方だなと思います。

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ベトナムとの共同開発における業務理解の向上と浸透

山田:後藤さんは、実際にこれまで債権の請求業務に従事したことはなかったと思うのですが、そういった企業規模によるニーズの違いなどの機微をどうやってキャッチアップしていったのですか?

後藤:とにかくユーザーの声を聴くことで解像度を上げていきました。例えば、社内の請求書を発行している部署の方にインタビューを行う中で、現職や前職での業務の詳細について聞くことで、会社のサイズによってフローやニーズが大きく違うことに気づきました。

他にも、社外のユーザーの方々にもご協力いただき、5人10人ぐらいの小規模な企業から大企業まで、計30~50社の方々とインタビューを行うことができました。

山田:仮説から立てた予測をぶつけてみてフィードバックを受けたと思うんですけど、そんな中で記憶に残っていることはありますか?

後藤:債権管理は昔から固まっている慣習が多い領域なので、枠を破ることが自分の中ではチャレンジでしたが、僕らが目指している世界について「本来はそうあるべきだよね」とお客様が認めてくださったのは非常に嬉しかったです。

山田:当初、社内のメンバーとのインタビューのときは結構辛辣なことを言われてたよね?

後藤:言われましたね。一番最初に山田さんに持っていった時に、山田さんの「ああこれか。。」みたいな顔が忘れられないです(笑)

山田:そうだね、あの時はまだ後藤くんの中の解像度がまだ高くなかったからね。

後藤:そうですね…我ながら何もできてなかったです(笑)

山田:でも、実務から業務フローを見直していくことで、今のプロダクトの設計に繋がったと思うので、かえって変な先入観を持っていなくてよかったんじゃないかとも思います。

後藤:確かにそうですね。何を聞いても「なんで?」っていう状態だったので、業界の慣習としてはあるけど「いやそれは要らないのではないか」とか、逆に業界の慣習としてはないけど「それがないと業務として破綻してしまうのでは」とか、そう考えていけたのはよかったと思っています。

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山田:今回、日本とベトナムでの共同開発となりましたが、ベトナムと日本では商慣習が違うことがあると思うんですよね。「そもそも債権管理とは何ぞや」というチーム全体での理解を共通化するのは大変な作業だったと思うのですが、そのあたりはどうでしたか?

後藤:そうですね、おっしゃる通り大変でした。そもそも僕の解像度が高くないのもそうですし、エンジニアである彼らもベトナムの商慣習にすら疎いという人が多かったので。

例えば取引先のマスターを作るとなっても、取引先のマスターって何だっけっていうところから始まったのでとても大変でした。

ただ、やったこととしては一つで、とにかく全部共有することです。細かく細かく情報を伝えながら、僕が解像度上がった時点で同じ粒度の内容をエンジニアチームにも理解してもらうという形でやっていきました。

結果、すごく良かったなと思うのは、エンジニアのメンバーたちもビジネスにすごく興味をもってくれたことです。

例えば基本的なところで「会計とは」とか「財務会計と管理会計の違いってこういうところだよ」とかを説明すると、とても熱心に聞いてくれて、ときにはうちのIRを見て「こんなに現金あるんだ!」みたいな話をするようになりました。

僕が細かく伝えたっていうのはもちろんありますし、伝えることにかかった工数はやっぱりすごく大きかったんですけれども、一方で彼らもすごく興味を持って取り組んでかなり吸収してくれて、最終的には「簿記とりたいね」みたいな話までできるようになりました。

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ビジネスの上流と下流を速く正しく繋ぐシステムにしていきたい

山田:今イチオシの機能とか、今後打ち出していきたいコンセプトがあると思うのですが、そのあたりはいかがですか?

後藤:コンセプトとしては、「誰に何を売りました」とか、「売上がこれぐらい上がった」というようなビジネスの上流と、「会計」という下流の部分を速く正しく繋ぐシステムにしていきたいと思っています。

具体的には、Salesforceで管理してる商談情報や売上予測から、会計で管理している仕訳を、なるべく速く、正しく、イレギュラーな作業なしに簡単に作れる世界を作りたいと思ってます。

今のイチオシ機能は、分割機能ですね。例えば弊社のようなビジネスはサブスクリプションモデルなので、12ヶ月分を1年契約で販売しました、ということがよくあります。

そのとき、会計的には売上を12個に分割して毎月月次計算しないといけません。120万円の年間契約は、毎月10万円分を売り上げているという記録を残していく仕組みになっています。

にもかかわらず、上流のビジネスのシステムはその按分を機能として有していないことが多いのです。なぜかというと、按分は会計都合のものなので、上流には必要なく、それを自動で按分できるようなシステムはこれまであまり作られて来なかったんですよね。

弊社もそうですし、インタビューに行った企業のほとんどがスプレッドシートやエクセルの関数を使って12個に分割して、「端数をどうするんだっけ」という問題に揉まれながらなんとか仕訳を作って会計に取り込むことが多いです。

「マネーフォワード 債権請求」では、「誰」に「どんな契約期間」を「いくら」で売りましたっていう情報を入れ込むだけで、適切な按分をしてくれて、それを仕訳の形にして会計ソフトなどに出力することができるようになっています。

これまでの、ビジネスと会計側で同じものを見てるはずなのに見てる角度が違うから違う形に見えてしまう、という課題をワンクリックで解決できるというのはかなり推しポイントですし、心を込めて作ったところでもあります。

山田:なるほど。しかも売上の計上だけでなく、支払いのサイクルも、年間契約の例で言うと、一括払いのパターンもあれば、3分の1ずつ支払っていくパターンもありますしね。

支払い自体もすごく複雑化しているから、そういったところに対応しているのはすごくいいところですよね。

後藤:そうですね。先に売上を例に出したのですが、請求書の方も綺麗に分割できるようになっています。

山田:売上、商談、計上ロジック、請求の分割、というそれぞれの要素は全く別の世界でバラバラに動いているから、それらをまとめて自動化できるツールは希少ですよね。

最近、SaaSやサブスクリプションのビジネスがどんどん増えてきている中で、そういった新たなビジネス形態と相性が良い債権請求システムであることは、実際にプロダクト触っていて私も感じました。

山田:今後を含めて、描いている機能の全体像からすると現時点でどれくらいの達成度合いですか?

後藤:そうですね、厳しめに見てまだ5%から10%くらいかなと思います。

山田:じゃあ伸びしろしかないですね。

後藤:間違いないです!フローで全体で管理できるというのが「マネーフォワード クラウド債権請求」を使うひとつのメリットになると思っているので、全体を網羅しなきゃいけない都合上、やりたいけどまだできていないことがたくさんあります。

それが残り90%くらいあるので、それをドンドンやっていきたいですね。

山田:今はサブスクリプションとかSaaSのビジネスがメインですが、これからはいわゆる伝統的な製造業を営んでいる企業などにも使ってもらいたいという展望はありますか?

後藤:あります!請求書発行って「決まったことをきちんとやりましょう」っていう仕事ですよね。使っていてテンションが上がるというよりも、どちらかというと「守り」の仕組みだと思っています。

ただ、個人的には、どんな性質の職種・業種でも情熱を持って楽しみながら携わって欲しいので、より多くの企業に導入してもらえるように、どんどん機能を増やして行きたいと思っています。

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インボイス制度に向けた機能拡充と外部連携

山田:今後開発していきたいと思っている機能には、例えばどのようなものがありますか?

後藤:まずは、Salesforceやkintoneといった上流のビジネスを扱うサービスや下流の会計ソフトとの連携の開発です。

あとは、APIの開放により、自由にお客様が利用されているシステムと繋げるようにすることですね。

その先には、月次ごとにスケジュールを組んで自動で請求書を作成できる機能や、売上の自動作成、月次締めの機能とかも実装していきたいです。

サブスクリプション特有の前受金や前受収益の管理機能などもなるべく早く提供していきたいと思っています。

山田:インボイス制度に向けて、最近だと請求書の受け手側のサービスがすごく増えていますよね。マネーフォワード クラウドシリーズだと「マネーフォワード クラウド債務支払」がそうですし、他社のサービスだと「Bill One」とか、「LayerX インボイス」とかですね。

将来的には、受け手のサービスがどんどん増えていくと、送り手のサービスとうまく連携することで、請求プラットフォームのような概念も作っていけるので、そういったところからも請求発行側のサービスはこれからすごく重要で期待できると思っています。

後藤:やりたいですね。「いくら払ってね」という合意が双方で取れていて、ちゃんとそれが払えれば取引が完了すると思うので、まさに今盛り上がっている受け取り手の方ともきちんと手を組んでやっていきたいと思います。

山田:請求発行側を電子化してPDFとかメールとかで送れるようにしても、受け手側が結局そのPDFを印刷してるケースがまだまだ多いんですよね。なので発行する側だけじゃなくて受け手側も含めて、DXは進めないといけないと思っています。

そういう意味では本当に債務支払というサービスがマネーフォワードにはあったから、その対になる債権請求っていうサービスが出てきたのは、本当にこれからのインボイス制度に向けて楽しみだなと思います。