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マネーフォワードが「マネーフォワード クラウド契約」をリリースする理由と実現する世界

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山田 一也(やまだ かずや)
株式会社マネーフォワード 執行役員
Money Forward Business Company CSO

当時、自社ではまだ展開していない領域について言及した「はんこレスの提言」とはどのような背景で生まれたのか

はんこレスの提言を代表の辻から発表したとき、『マネーフォワード クラウド契約』の構想はまだありませんでした。

コロナが社会に大きな影響を与え始め、従業員の物理出社を取り止める企業が増える中、バックオフィスの方々は例外として物理的に出社しないといけない状況になりました。

その当時、我々が『マネーフォワード クラウド』で提供していたハンコレスは請求書を発行する業務に関してだけで、法務の領域はほとんどカバーできていませんでした。

ただ、バックオフィス全般の生産性向上をサポートしていく立場として、「世の中はこう変わっていくべきだ」と社会に訴えていこう!というのがきっかけで、ハンコレスの提言は出来上がりました。

後発にも関わらず電子契約サービスを自社で開発する意思決定をしたのは、「紙の契約」と「電子契約」が混在し、ユーザーが解消できていない非効率な業務がまだそこにあったから

ハンコレスの提言の発表後、世間からはすぐにたくさんの反響が寄せられました。

特に、「請求書だけじゃなく、契約書のはんこレスも進めていきたい」という声が多く、『マネーフォワード クラウド』のユーザーからも、「電子契約サービスはないのですか」という声をいただくこともありました。

そういった変化や思いに触れ、世の中のニーズが自分たちの想像を超えて大きくなっていることを感じたのをきっかけに、自社での開発を検討し始めたのがその2~3ヶ月後だったと思います。

プロジェクトをキックオフした当初は、すでに電子契約のサービスがいくつか世の中にリリースされていたこともあり、それらがしっかりユーザーの課題を解決できているのであればそれらの会社と提携していく道もあると思っていたので、自社でやるかどうかは五分五分でした。

そのため、電子契約サービスにおける課題やユーザーペインの解消状況を具体的に把握し明らかにするため、市場調査やユーザーインタビューを進めて行きました。

それらの結果わかったのが、電子契約サービスを導入済みの企業であっても、100%全て電子契約に置き換えられている会社はほとんどない、という現実でした。

マネーフォワードの社内でも電子契約のサービスを使っていますが、契約締結の相手方が紙の契約書を希望すればそれに合わせるため、会社の中で「紙の契約」と「電子契約」が混在する状況になっています。

そのため、電子と紙の契約が混在した状態での効率的な管理についての課題が大きく、解決できていないことを社内の法務部へのヒアリングを通じて知りました。

そこから、後発ながらも自社で電子契約サービスを出していく意義を感じ、開発をスタートしたというのが背景です。

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『マネーフォワード クラウド契約』は契約書を締結した後の世界も変えていく

『マネーフォワード クラウド契約』のコンセプトは、「紙契約と電子契約が混在した世界で、効率的な契約管理を実現するサービス」です。

電子契約を締結する仕組みは一つの機能に過ぎなくて、最終的なゴールは、紙契約と電子契約が混ざった状態でも一つのシステムの中で契約書の更新期限を管理したり、情報を呼び出したりできることです。

例えば、事業部から法務部に「こういう契約書を過去にも結んだと思うんだけどそれを見せて欲しい」というリクエストがくるまでもなく、適切に権限が設定され、電子契約であっても紙契約であっても事業部側で必要なものはすべて確認できる、ということを目指しています。

契約書を締結した後の世界の生産性向上を目的としているサービスで、その一つの手段として「電子契約」を締結する機能を使える、というのがひとつの大きな特徴ですね。

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「契約」という企業活動の上流工程における情報が『マネーフォワード クラウドERP』に繋がることで、バックオフィス業務の効率や精度は飛躍的に向上する

クラウド契約を単体で使っていただくことはもちろん想定しているのですが、より真価を発揮するという観点だと、『マネーフォワード クラウドERP』の1モジュールとしてクラウド契約をお使いいただくことも強く推進していきたいと思ってます。

企業の経済活動を見た時に、経理や労務でのアクションの前に、必ず「契約」という取引事象が発生します。

上流の契約データから押さえていくことで、その後の労務や経理の生産性が向上するのではないかと思っていて、その連携性はぜひ実現していきたいですし、感じていただきたいと思っています。

例えば、経理部が抱えている悩みとして、「今月分の請求書を全て回収し終わったかどうかが網羅的に把握できない」という課題が存在しているのですが、『マネーフォワード クラウド債務支払』のようなサービス単体ではそのソリューションを100%は提供できていません。

※『マネーフォワード クラウド債務支払』:受け取った請求書をワークフローにアップロードして承認をもらい、支払いまで一気通貫で行えるサービス

ただ、これと『マネーフォワード クラウド契約』を組み合わせることで網羅的に請求書を回収できないという課題を解決できるのではないかと思っています。

例えば、『マネーフォワード クラウド契約』で締結した契約の情報をどんどん溜めていって、その契約内容から今月これだけの請求書が届くはずだ、というリストは出せると思っています。

それを『マネーフォワード クラウド債務支払』に連携して、経理部が請求書が届いているかどうかを管理していく。

上流の「契約」という情報を連携することで、その取引の網羅性が確保できるので、より効果的かつ効率的に支払い業務を管理できるようになると思っています。

ココロ動かすクラウド

0.5歩先の未来をユーザーに示し実現することが「ココロ動かすクラウド」のコンセプトに繋がっていく

『マネーフォワード クラウド』には、「ココロ動かすクラウド」というコンセプトがあり、それをどうやって実現するのかを考えたときに、ユーザーに寄り添う姿勢やサービス、機能が必要だと思っています。

例えば、もしかすると将来は紙の契約がなくなっていて、全てが電子になっている世界が実現しているかもしれないのですが、おそらく数年後だとまだ紙の契約と電子契約が混在していると思います。

2歩先、3歩先ではなくて、紙の契約と電子契約が混在している足元の現実的な世界の課題を解決するために、その0.5歩先の未来をユーザーに示せるような、紙と電子が混在している世界でも契約の管理を効率化できるサービスにしていきたいです。

契約の周辺領域については、契約締結する前のリーガルチェックや反社チェックなどにもたくさんの業務効率化の可能性があると思っていて、ここに関しては自社で全てを提供するのではなく、他社のサービスを連携させていくことで広くユーザーの課題を解決していきたいと思っています。